うそラジオ Podcast 松任谷由実はじめました

*****横浜ゲイ祭り*****

「とりあえずさ、ニューグランド行ってさ、このあとどうするか考えよ」

【ゲイサイ5】の開催場所であるパシフィコ横浜をあとに、我々が向かったのはユーミン御用達の横浜の老舗ホテル・ニューグランドだった。

3月21日Sunday夕暮れ。
山下公園に面したニューグランドの喫茶ルームで、ユーミンはうれしそうにロード・オブ・ザ・リング 〜カロリーの塔〜のような高さ25センチはあるチョコレートパフェをつついていた。週末の女子高生の密かな楽しみを絵にしたような微笑ましい図である。

そんなユーミンの横で私とくままろと、近所だから遊びに来たという東芝の福岡さんが手にしていたのはビールジョッキ。これで野球帽でもかぶれば休日のお父さんの集まりである。天下の松任谷由実を囲みながら夕方4時から生ビールを飲むとは、ずいぶんなものである。

でもちゃんと断りはいれた。福岡さんが。

「ユーミンさん、ぼくたち・・・ビール飲んでもいいですかっ!!??」

「ああどうぞどうぞ やってやって」

やってやって。いい言葉である。やってやって。 気ままにおやんなさいとか本能のままどうぞって感じで、やってやって言われると、・・・よおし見てろよお!!・・・と俄然はりきりたくなる。

しかもここは横浜だ。ハマだ。窓からは山下公園と船が見えてるし建築物からは異国の香りがプンプンしてるし、・・・おっしゃあ、いっとくか!!・・・と血が騒ぐ。それが私たちはわかりやすく生ビールという形に表れるが、ユーミンの場合はチョコレートパフェだった。

「どうしてもね、ここに来ると食べたくなるのよ〜」

だがしかし、さすがに高さ25センチのカロリーの塔は制覇できないようで、途中で登るのをやめたようだった。私たち3人もビールのおかわりをすることはなかった。このあと中華街にくりだして本格的に食べて飲む計画だったからだ。ただ、肝心のユーミンのお腹が中途半端にお腹いっぱいらしい。

「今日、午前中に2食食べちゃったんだよ。朝はホテルのルームサービスでしょ? お昼はゲイサイのお弁当。まだ全然すいてない」

とは言っても、せっかく横浜に来たんだから軽く食べていく!!と、やるき汁を出していた。

お目当ての店に探りの電話を入れてみた。福岡さんが。

「全然ダメみたいですよ。並んでるそうです。どのぐらいであくかは『ソレハワカラナイヨー』と言ってました」

ユーミンも納得気味に、そしていささか興奮して言った。

「あ、ダメだよ。だって今日日曜日でしょ〜? 日曜日の中華街は無理だよ!!」

そうなのだ。みなとみらい線も開通したせいもあり、ユーミンが言うところの日曜の中華街よりもさらに人人人人でごった返しているのだ。それにユーミンは今日は朝から歩き回っていたので疲れてもいる。私とくままろもなぜか仕事でもないのに偶然徹夜で来ていてヘロヘロ。福岡さんはこのあと家族サービスが控えているということで、結局は現地解散という流れになってしまった。

そうなのだ。ユーミンは朝から歩き回っていたのだ。村上隆さん主催による【ゲイサイ5】。会場となっていたパシフィコ横浜のそのホールは、すごく天井が高くて、バレーの試合会場なノリ。巨大な体育館。巨大な避難場所。その空間に、500近くのブースが どぁーーーーーっ とあり、ユーミンは審査員としてすべての作品を見ていったのである。『死ぬまで芸術やりますか?』と書かれたスタッフ用の紺のハッピを着て。

「楽しいけど、思ってたより疲れたね。ちゃんと見てあげなきゃとも思うし、けっこう頭はつかった」

審査員とは大変な仕事なのである。5人の審査員による話し合いもかなり白熱していた。情熱を受け止めるには、受けて側にも同じぐらいの情熱がないと成立はしないのだろう。

そんな情熱大陸のような審査会議も終わり、授賞式が始まるのを待っていたとき、ユーミンは同じく審査員として来ていたアーティスト・日比野克彦さんに声をかけた。いつから交流があるのかは知らないが、内容がこんなことだったから古いつきあいなのだろう。

「ねえねえ日比野さん。久保田君に似てるって・・・言われるよね?」

久保田君とは、久保田利伸のことだ。日比野さんも、『きたな!!』っという顔をして言った。

「言われる。今まで二人ぐらいに久保田君だと思われて話しかけられたことありましたよ」

ユーミンはうれしそうである。ユーミンはもう10年前から、有名人におけるこの手の顔の人の分布図・組織図・形態図を作りたいと言っていた人なのだ。

「どんな風に間違われたの?」

「空港で立ってたら、向こうから人が来て、いきなり挨拶されてずっと話をしてくるから・・・これは間違ってるんだろうなと。・・・・・すみません、僕・日比野克彦って言うんですけど・・・って言ったら、・・・・わあーーーーーすみません間違えましたーーーーー・・・って。その人、東芝の人だったけど」

ユーミン大爆笑!! うきゃきゃきゃ言って笑っていた。そおゆうの聞きたかったんだよお!!と目が言っていた。

このときは笑っていたユーミンだったが、授賞式では笑われた。

授賞式が始まり、司会のお姉さんのアナウンスとともに、審査員がひとりひとり呼び出され定位置につくシーンでのこと。順番は安野モヨコさん、曽我部恵一さん、奈良美智さん、日比野克彦さん、最後がユーミン。
それぞれ呼ばれたら下手から登場し、順番に上手側に並んでいくようだった。

きっとステージの裏で審査員に立つ場所については説明されていたに違いない。たぶん床に立ち位置の目印が貼ってあったのだろう。その目印のところに立ってくださいと。日比野さんまでは、きれいに等間隔で並んでいた。

だが、「最後は、松任谷由実さんです」と言われ出てきたユーミンは、登場していったん止まった場から動かなかった。動かないどころか無駄にニコニコしている。本来なら一番奥の日比野さんの横に行かなければいけないのに、ユーミンはなぜか安野モヨコさんの隣で笑っていた。

私は会場で体育座りをしてステージを見ながら、隣にいた福岡さんに言った。

「ユーミン、話聞いてなかったよ、絶対」

聞いているふりをしてまったく聞いていないの術!!
ユーミンがそんなところにいるのでみんな困っている。ステージの人も観客も。今すぐ走っていって、ユーミンにカンペをだしたい気分だった。『そこじゃない ユーミンはあっち→』 もちろん矢印つきで。

ユーミンにさりげなく促したのは安野さんだった。右手をそっと出して「あちらのようですよ」とサインを送ってくれた。それでやっと気がついたユーミンは、肩をちょこんとあげて、あれ?間違えちゃった。でへへーーーという感じで歩いていった。で、お客さんに わはははー と笑われた。

しょっぱなからのあの客のひきつけかたはさすがである。(そうなのか??)
サービス精神が旺盛だと自然とああなるものなのだろう。(感心してるのか?)

わはははーーーーー。