うそラジオ Podcast 松任谷由実はじめました

*****カニ・トマト・マアム・夢*****

苗場でカニにかぶりつきながら、私の目の前に座っていたニワちゃんがうれしそうに言った。

「僕、あれが好きなんですよ。あの振り付け!!」

話しかけた相手は私ではない。ニワちゃんの隣に座っていた振り付けのトマト先生である。が、・・・・トマトってなんだ。みんな普通にトマト トマトと呼んでいるが、慣れとは恐ろしい。人の呼び名が「トマト」と言うのは少し変です。「アスパラ」「わさび」「ネギ」とかはもっと変。アラレちゃんワールドじゃないんだから。

で、トマト先生。どちらかというと顔は理系で少女マンガの役どころで言えば、気難しい一学年上の先輩という雰囲気。前髪が涼しげな目元を隠していて、でもよく見ると目の奥は笑ってる。そんなかんじ。だがそのときのトマト先生の視線と両手は一直線にカニに向けられていた。突然のニワちゃんのセリフも耳に入っていないのか?と思ったら、聞えていたようだった。

「え? どこのことですか?」

今まで私もニワちゃんも、トマト先生とはあまり話す機会がなかったのでなんだか少し緊張。きっとニワちゃんも距離を縮めるために少しは気を使って話しかけたのだろう。

「あの振り付けが好きなんですよー!! サニーデーホリデーのあの振り付け!! ほら、途中でユーミンがくるくるくるくる回るでしょ? あれ、かわいい。いいっすよねーーー」

するとトマト先生は、カニの手を一瞬休めてポソリと言った。

「ああアレ。・・・・・・アレはね、ユーミンが勝手にまわってるだけ」

勝手にまわっている?
確かにあのシーンでは、ユーミンがくるくるくるくるまわっていた。これでもかというほどにまわっていた。ステージ上を滑るように動きながらクルクルくるくるくるくるくるくる・・・・。

アレがユーミンの勝手なターンならば、ニワちゃんのせっかくの感想もだいなしだ。今さら、二番目に好きなシーンを言うのも気がひけるってものだ。

「え? アレ、振り付けじゃないんですか??」

ニワちゃん動揺。トマト先生カニに戻る。
すると私の隣でまたもやカニをつかんで離さないままのユーミンが参戦してきた。

「うん、振り付けとは別にステージでなんか動きたくなるバイブレーションって出てくるの。あそこではね、まわりたかったのよ」

かなりの数まわっていたので、かなりまわりたい気分だったのだろう。ステージには魔物が棲んでいるっていうから、きっとユーミンは魔物に「まわれ〜 とにかくぐるぐるまわれ〜」と耳元で囁かれたのかもしれない。

ああ、そんな苗場での思い出が、もう遠い昔のようだ。
でも今週は、もっと遠い昔の証拠がユーミンの前に出現した。それはオオカワ宅から出てきた写真。出てきたといっても大切にしまっておいた写真だが、整理をしていたらあることに気がついた。なんと今が、その写真に刻まれている日付からちょうど10年のものばかりなのだ。

94年2月27日は苗場での一枚。94年3月6日は有楽町のニッポン放送のスタジオでのもの。3月26日、4月30日、5月1日・・・。

スタジオには、当時ゴールデンウィークにフジテレビがやっていたイベント「LIVE UFO」のでかいポスターが貼ってある。机には「JAVA TEA」に「Cha tea」。ユーミンの手には食べかけのサンドイッチ。日清ラ王の麺まですすっている写真もある。

「若いねえ。髪長くてかわいいねえ」と言っている私とクボさんであったが、ユーミンの着目点は肌のハリとか髪型とかではなかった。

「ああっ、やっぱり食べてる!! 昔から食べてるんだあ!!!」

ユーミンがこだわったのは、ところどころに写っているお菓子。今ではれっきとした職人菓子ハンターである自分だが、この写真によって一朝一夕でなったわけではないことをどうやら確信したようだ。ローマは一日して成らず。大菓子食いは10年前も大菓子食い。

「ニッポン放送に来ると、食べるっていうモードだったんだよお。いつもテーブルに女性週刊誌とか2〜3冊あってさ、お菓子があってさ、それで癖になっちゃったんだよお」

結論は人のせいである。
ユーミンの大菓子食い陰謀説。X-FILEノリ。

お菓子といえば、ユーミンが手がけた不二家カントリーマアムのCMソングが流れ始めているが、早くこのうそラジオでも全編かけたいものだ。そして不二家とユーミンといえば、懐かしいソフトエクレアのCMソングだが、私にとってのソレは「やさしさに包まれたなら」ではない。

♪ほっぺたに プレゼント〜 不二家ソフトー ソフトー ソフトー エクレア〜♪のバージョンである。

「あれね他にも♪風のセロファンで〜♪ってまだ歌うところがあるんだよ。一曲にはなってないけどね」

とユーミンは言った。

「じゃあユーミン、オールナイト時代からアレ聴きたいってリクエストがよく来てるし、・・・私も大好きだし、だから全部つくってうそラジオで流してくださいよーー。」

とぶりっこにゃんにゃんして言ったらユーミンはこう言った。

「いいよ」

「いいよ? いいよって、いいんですか?」

「うん、いいよ。つくるよつくる!!」

・・・・ユーミンは、確かに「いいよ」と言った。「つくるよ」と言った。
うそレーベル第一弾シングルも夢ではないかもしれない。