******沢田雅美の怪******
スタイリストの金沢さん率いるレディースパック部隊の次なるミッションは、フリーマーケットへの参加だった。引越しにより旧松任谷邸から出た膨大なさよならアイテムに新たなる生命を吹き込むのが今度の指令なのね!!チャーリー!!
スタイリストの金沢&しずかは前日から準備を開始。
で、当日は見事な冬晴れ。フリマは都内のある場所で開催されたのだが、モノが多いため2ブースを借りることに。朝9時に金沢さん・しずかちゃん・くままろが集合し、私はそのあと合流することになっていた。
くままろはすでにこのうそラジオでも有名なキャラなので知っている人がほとんどであろう。ユーミンのマネージャーになるまでは、キララ社(ユーミンの事務所)のデスクを10年以上勤め上げたツワモノ。下町育ちでかなりのマイペース。
しずかちゃんはスタイリスト。歩く文化服装学院とタイトルがつきそうなオシャレさん。耳から下が戸川昌子みたいなもじゃもじゃヘアー。実家は八百屋なので野菜や果物に執拗なほどにうるさい。みかんの糖度に関してあんなに文句を言う人をはじめて見た。それからものすごく若く見えるがものすごく若くないところがおもしろい。
そして同じくスタイリストの金沢さん。最初の印象は・・・・うわあ、ちっちゃあい・・だった。150センチぐらいだろうか。ただ小さいだけでなく、最初会った時のいでたちがジーパンの膝までのやつとか斜めがけのバック姿とかだったので、・・・・子供か!?・・・・・と心の中でつっこみをいれてしまった。
そういえば最初ユーミンに金沢さんを紹介されたとき、こう言われた。
「金沢さんはね、沢田雅美に似てるんだよー! ねー、似てない??ほらー、似てるよーーー!!」
確かに似ていた。昔のドラマ・ありがとうシリーズに欠かせない存在だった沢田雅美。橋田寿嘉子ファミリーの一員だった沢田雅美。だいたい主人公のダンナの妹とかで、陽気なお姉さんにはなりきれない口うるさい耳年増な女役が多かった沢田雅美。そんな沢田雅美に似ている金沢さん。似てるといっても顔がである。金沢さん自身も、
「あたしも自分で思うもん。昔、地下鉄にお芝居のポスターが貼ってあってそこに沢田雅美が載っててさーー、見たとき思わずアレ???って思ったもん。あたしじゃん!!って」
本人が似ていると言うのだから、似ているのである。私は昔、斉藤由貴・高岡早紀・松雪泰子・大塚檸々
に似ていると言われたが、今となっては誰ひとり言ってはくれない。自分でも声を大にして「似てるじゃん!」と言うにはかなり気が引けるのでまったく似ていないのであろう。
まあ、そんなメンバーで臨んだフリーマーケット。私が現場に着いたのは10時すぎですでに商売は始まっていた。何人かがブースを囲んでいて思ったよりみんな忙しそうだったが、なにより一番驚いたこと・・・それは、現場の活気ではなく、金沢さんがふたりいたことだった。
小さい沢田雅美がふたりいる・・・・。しかも、もうひとりは金沢さんより小さい。微妙に顔は違うがだいたい同じ。しゃべってる声もほとんど同じ。おおざっぱな口調とツッコミ体質も同じ。なんなんだこのW金沢は!? 双子なのか??
「あ! オオカワさん! 紹介するね、これ、うちの姉ね」
姉?? 姉かあーーー。
こんなにも似ている姉妹を見たのは久しぶりである。里中満智子のマンガ「まみむめ・見太郎」を思い出してしまった。あれは双子マンガだが、気分はそんな感じなのだ。
「ねえー、これいくらだっけ? ねえ金沢さん!!!」
と私が聞けば、ふたりそろって振り向いて、「え?」と言う。
( ひ、ひとりでいいんですけど・・・) と心の中でつぶやく私。うーんまぎらわしい。
「ねえ、金沢さんちはみんな小さいの?」
と素朴な疑問をぶつけてみた。
「そおなの!! うちはみんな小さくてね、友達が来ると驚かれるよ。鏡の位置が違うんだって! あたしたちには普通なんだけど他の人が鏡の前に立つと顔が映らないんだって。低すぎて。ガリバーの気分になるらしいよ、うちに来ると」
きっとこの金沢家は、姉妹だけが似ているのではないとにらんだ。きっと家族中が似ているのだ。
自分にそっくりな人間がいるというのはどんな気分なのだろうか。私は声が姉とそっくりらしく、いまだに実家に電話しても親に間違えられる。他人に抱かれるとたちまち泣き出していた赤ちゃん時代の姪っ子も、私の時には大丈夫だった。きっと私の声が姉の声に似ていたからだと実は確信している。
声といえば、今回の【やさしさに包まれたなら】も不思議としか言いようがない。
「こればっかりは30年やってないとできないことだよね」
と本人も言うとおり、30年前の自分と一緒に歌うのは並大抵のことではない。声質もかなり変わってはいるものの、ユーミンはユーミンである。間違いない。
今のフレーズもユーミンだし、このフレーズもユーミンだし・・・。かといって昔のアルバムも普段聴いている人にとっては当時の歌声も聴きなれたものであるから、そんなに懐かしさを覚えることはない。
ただ、昔と今を並べて聴かせられると、ああ、時がそれなりに経ったのだなと思わせられる。そしてこのたび荒井由実BOXが発売されるということで、1972年発売のデビュー曲【返事はいらない】をかけたのだが、そのサビを聴きながらユーミンはつぶやいた。
「うわあーーー・・・すごい・・・ちりめんビブラート!!!」
ユーミンがユーミンを語る美しくも笑える瞬間であった。
昔のユーミンがいたり今のユーミンがいたり、金沢さんがふたりいたり、沢田雅美がいたり、ニワちゃんがニヤニヤしていたり、フリマでお宝を地味に大放出したりと、あわただしい世の中である。
さて、このへんで我々は、フリマで売れ残った洋服をユーミンちゃん福袋に仕上げる最終ミッションにとりかかるとしよう。ね、チャーリー!!