うそラジオ Podcast 松任谷由実はじめました

*******これは構成作家・大川女史のページです*******

このうそラジオもなにかとお世話になっているニッポン放送に、デジタルコンテンツ部・通称「デジコン」という部署がある。デジタル放送や各番組の携帯サイトを作ったりしているハイテクコミュニケーションチームだ。

私は自分のパソコンに何かトラブルがあると、ここの伊藤さん(ユーミンのオールナイトニッポンの5代目ディレクター。ユーミンがつけたあだなは『ヘリウム伊藤』)に、いつも「なんとかしてくださいよお・・・」と膝まづいてすがる。その日も私は伊藤さんを米つきバッタのごとく追い回しデジコンを占拠。そしてパソコンを診断してもらっている間、ひまだったのでメモ帳に絵でも描いていようと思ったのだが・・・・・。

ない。あれ??? ・・ない。やっぱりどこにもないのだ。鉛筆が。ボールペンだっていい。この際書けさえすれば筆だってハイマッキーだってゼブラだっていいのだが、ペンたて自体がどのデスクにもないのだ。
「鉛筆とかないんですか???」
と恐る恐る聞いてみたら、あっさり言われてしまった。

「鉛筆?? ないよ。使わないもん。だってここ、デジコンだもーーん」

そうなのだ。どうやらここの人間は文字は打っても文字は書かないらしいのだ。っていうかそれが仕事なのだ。
それが、デジタルってやつなのだよ明智君。ぐあはははははははは。

今の時代、パソコンとか携帯が発達してしまってわざわざ手紙を出すことも少なくった。仕事の連絡事項もワープロ打ちの紙きれになってしまい、誰がどんな字を書くのかよくわからなくなっている。誰が打っても同じ字体。同じ印象。でも、それってどうかな??と私は思う。同じ釜の飯食ってるのにさあ。
人が書く字はそれぞれで、それぞれその人なりの味を出していると思う。もちろん出版物や会議書類やデジコン部はわかるけれど、だんだんと手書きによるコミュニケーションってなくなっているように思える。それは淋しい・・・・というかこわい。なぜなら私は人が書く字でちょっとだけ性格を見たりするタイプだからであり、その人がどんな人なのかを「字」というアイテムで情報を得ていたから。・・・・みんなそうじゃなかったのかなあ????

ユーミンの字は、熱心なファンの方ならご存知だと思うが、ちょっと長細くて丸みを帯びている形だ。実は、私、初めてユーミンの手書きの字を見て「違う!!」と思った。違う!!というのは、自分が思っていた印象と違うということだ。ユーミンはもっとササッ・ススッという字を書くと思っていたのだ。
ササッ・ススッ。わかりますか???曲線よりも直線のイメージが強い感じ。ちょっと攻撃的な。萬田久子以上、五輪真弓以下。もしくは、夜更けの江波杏子。
でも実際、そんなことはなく、全体的にほんわりと緩やかな文字だった。そうだよな、「守ってあげたい」「ずっとそばに」なんて歌詞を書く人が攻撃的であるはずがない。多分、出会う前の昔から抱いていた「びよーんと長いソバージュ」とか「天才」とか「変なこといったら怒られそう」というイメージが勝手にそうさせていたのだろう。

ユーミンは携帯を持っているがメールはやらないそうだ。もしかして近い未来、手を出すこともあるのかもしれないが、今のところ必要がないらしい。ユーミンの携帯はデジタルだがかなりアナログだ。私たちはあの機器を、用意されたサービスの通りに使っている。たとえば、私の場合「電話をかける」「メールをする」「電話番号やアドレスを記録する」「写真を撮り記録する」「目覚まし時計として使う」「iモードを利用する」などだ。だが、ユーミンは「電話をかける」と「写真を撮り記録する」という機能しか使っていない。

誰かに電話をするときは、バッグから愛用の皮の小さなアドレス帳を出し、それを見ながらプッシュボタンを押す。
「めんどくさくないよ、このほうがいいの。えっと・・・た、た、た・・・」
そう言って『た行』の名前を探しているユーミンがいいというより、そのアドレス帳を大事にしているということが伝わってきて『いいな』と思ってしまう。で、そこからちらりと見えるユーミンのマジックでにじんだ小さな文字も『いいな』と思ってしまう。大人の男が万年筆を大事にするみたいな。雑誌で言うと、ラピュタね。完璧に。

『字』といえばうれしい思い出がある。
その昔、ユーミンのオールナイトニッポンが11年という歴史に幕を閉じ、次なるニッポン放送のユーミンによるスペシャル放送が始まるまで、ユーミンと三ヶ月ほど会わないことがあった。久々に番組をやるということでユーミンがニッポン放送に来たとき、テーブルに置いてあった私の原稿を見てユーミンは言った。
「わあ。オオカワさんの字。ひさしぶりぃーーー。うれしいーーー」
この一言がどんなに私を勇気づけたことか。ああっ、手書きを貫いてきて良かった・・・。ああっ、田舎のお母さま、今、ユーミンがあなたの娘に向かってうれしいとささやきましたよ。

ワープロが我々一般人に導入されてからも、私はできるだけ放送原稿は手書きにしてきたが(今や放送作家の90%がワープロ原稿)、そのほうがこっちもテンションあがって楽しいのですよね。

このうそラジオは、メールオンリーのおたより募集なのであなたがどんな字を書くのかを見ることができなくて残念です。でも、時々オールナイト時代によくハガキをくれた常連リスナーの名前をユーミンと一緒に見つけては「あっ、内山君だ!!」「英恵ちゃんだ」「宍戸くんね、いつもサンキュウ」と思うのと同時に、ハガキに書いてあったそれぞれの字体も蘇ってくるので、字の偉大さってすごいなと思ってしまうのでした。