**** 横浜の夜 ****
シャングリラ㈽横浜公演が、早くも終わろうとしている。
「三半規管が弱いからさぁ〜、しんどいかも・・・。だから家でもその場で何回もまわったりして練習してるんだよね」
と、二ヶ月ほど前にユーミンが前向きにではありつつもぼやいていたのが遠い昔のように思える。今ではユーミンはステージで堂々と横に揺れまくりぐるぐると回り続けているから。
「でもね、たぶん世界中見渡しても、あんなことさせてもらえるの私だけだから、思いっきりやるよ」
と、ユーミンが言っていたのも思い出す。私は何度か今回のステージを見ながら、「あ〜、アレあたしもやりた〜い」と身体がうずいた。ユーミンの動きに限らず、ロシア人アクトの動きに対しても。
「よくインタビューで『どんなステージになりますか?』って聞かれるけど、言葉が見つからない。今回ばかりは見てもらわないと伝わらないと思うんだ」
と、始まる前に言っていたことにも納得した。そしてそれはすべてのことに対しても的を得ていると思った。
自分の目で見ないとわからない。すべては自分で見て判断するということ。そういう意味でも、このシャングリラ㈽は人々に根本的な何かを投げかけているようにも思う。
本番15分前。
ユーミンはすでに楽屋でひとり、集中タイムに入っている。しばらくすると突然そこから大きな声が聞こえてくる。
「アーッ!アーッ!ハァーッ!!ハァーッ!!」
それはユーミンがステージ前、決して欠かすことのない発声。声だし。
楽屋の前でユーミンを待つスタッフたちは、皆声を潜め、神妙な面持ちで聞いている。それはなんだか一種の儀式のようでもあり、ステージの成功を願うひとときのようでもあった。
私達は常に客席からステージ上のユーミンを見ている。
ユーミンはステージから私達をどんな風に見ているのか、どんな風に見えているのか・・・それが気になるところだが、やっぱりそれを見られるのも、世界中にただ一人、ユーミンだけなのだ。