うそラジオ Podcast 松任谷由実はじめました

******実録・桃井かおりルポ******

桃井かおりに会った。
本来なら「桃井かおりサン」と表すべきであるが、生まれてこのかたずっと桃井かおりは「桃井かおり」と呼んでいたし(友達との会話の中で)、イメージ的に桃井かおりは「桃井かおり」なのでそれを貫こうと思う。

なぜ桃井かおりに会ったかというと、うそラジオでもお知らせしていた本物ラジオのスペシャルプログラム「松任谷由実 私のHello, my friend」のゲストとして来てくれたからである。本物ラジオとはいえ、喋るのはユーミンだしディレクターはニワちゃんだし構成も私だし。うそトリオ健在というかんじでしょうか。

ユーミンはゲストに桃井かおりが決まったと聞いて、

「ああ、おもしろいよおあの人—。 桃井かおり!!!!ってかんじで来るからね」

と言った。桃井かおり!!!!ってかんじで来る!! それだけで吉牛つゆだくだっくだく。しかも草笛光子・吉行和子に続く大女優クラスをまたしても拝めるとは、盆と正月と生理が一緒に来ちゃったみたいでため息しか出ない。

当日はもちろんのことユーミンが先にスタジオ入り。いつものうそラジオと同じスタジオなのに、どこかが違う。まずは人の数。それはユーミンが来る前からそうだった。

たとえば、そわそわした若い兄ちゃん。うそラジオの現場には、ほぼ若い兄ちゃんはいないので私の心拍数はややアップ。彼はニッポン放送編成部の人で、どうやら新聞に載せる写真や記事の担当者。今回もスポーツ紙にツーショット写真が載っていたと思うが、見た人は思い出して欲しい。ふたりのうしろの壁には、ニッポン放送とか1242とかの文字がたくさん書いてあるのだが、アレは本当の壁ではない。持ち運びができる便利な板の壁なのである。結婚式の新郎新婦の後ろにとりあえず立てた金屏風みたいなもの。観光地にある顔だけ穴があいた看板みたいなもの。古い家の木でできた雨戸みたいなもの。ユーミンが来る前、「うんしょこらしょ」と若い兄ちゃんが壁を抱えてスタジオに入れていた。あちこちぶつかりながら。

かと思えば、ベテランにはベテランを!!ということで来てくれたミキサーの大御所さんは、マイクの位置が変だ!!といって技術部まで呼んで原因究明。スタジオはもはや戦場と化していた。
そのとき私はスタジオにあるイスがどれもシミだらけであることを発見し、超人ハルクならぬ超人ムンクに。

「こんなイス、どんな顔して大女優にすすめればいいのよーーーーっ!!」

と、嘆き苦しみチャーリーズエンジェルの3人目っぽい足取りで他のスタジオに潜入。汚いイス3つをキレイなイスと変えるという珍しい任務を遂行するために、ガラガラとイスを押して廊下を駆け巡っていたのだった。(そんなときでもニワちゃんは相変わらずマイワールド中。今はKISSではなく阪神漬け。何日か後に国民の多くから【阪神 死のロード】と言われることをこのときの彼はまだ知らない)

とにかく桃井かおりが来るまでがあわただしかった。来てからは・・・・皆、目が宙を泳いだ。
たぶん、自分の中の「桃井かおり」と、今目の前にいる現実の「桃井かおり」とをバーチャルくらべっこをしていたのだと思う。そして途中でこんがらがる。

桃井かおりはきれいだった。きれいだったというよりは、清楚。この時点で、私たちがどんなに勝手に桃井かおりという人物の中に悪の華を咲かせていたのかに気づかされた。

「ね、おもしろいでしょおーーー」

私たちの困惑ぶり興奮ぶりを見抜いてすかさずユーミンが言う。すると桃井かおりは不思議そうに笑いながら、

「なになになにーーー??」

と、スタジオ中を見まわす。そして我々スタッフは心の中で ( うわっ 桃井かおりが今私を見て笑ったわ ) と理解し、皆固まるのであった。

放送は無事終了。20数年のつきあいというふたり。後半はそんなふたりの内面や歩んできたそれぞれの人生などが垣間見え、同じ女性としてすごくためになる話を聴けたと思う。番組を聴くことができなかった人は残念としかいいようがないが、逆に偶然聴いた人も大勢いるとおもうので、これも縁ってやつだろう。

マネージャーも連れてこず、ひとりでスタジオにやってきたところは、少しだけユーミンに似ていると思った。
ユーミンも現場にタクシーでひとりで来るしひとりで帰っていく。根本的には似ているけれど、根本的のほんの少し前のところが違うかんじ。ユーミンがマジメな部分は向こうがフマジメ。ユーミンがフマジメな部分は向こうがマジメ。おおざっぱにいうと。

でも、それはたった一日・しかも1時間ほどだけふたりでいるところを見て思っただけなので、まったく当たっていないと思う。友達同士のことは、その友達同士にしかわからないはずだから。

まったく共通していないことといえば、自分の呼び方。ユーミンの「私」に対して桃井かおりは「かおり」。

「桃井は自分のことをかおりって言うんだよ」

と、ユーミンから事前に聞いてはいたが、実際この目で見たときは驚いた。

「かおりねぇ・・・・」

本人の口からこの言葉!!かおりねぇ・・・!!! 実に女らしいではないか。ピストルをパンッと打ったら花吹雪が飛び出すマジックみたいではないか。人は見かけによらない・・・の法則。
ただし、ユーミンが「由実はね・・・」と話しているのを見たら、・・・・・・それは明らかになにかの罰ゲームだと思ってください。テーブルの下を覗けば録音機をまわしているニワちゃんがきっといるはずだから。